本剤(ペンタサ®注腸1g)の有効成分であるメサラジンの主な作用機序として、活性酸素消去作用1)、ロイコトリエンB4(LTB4)生合成抑制作用1)、ホスホリパーゼD活性化作用2)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPAR-γ)活性化作用3)、核内因子κB(NF-κB)活性化抑制作用4)、肥満細胞からのヒスタミン遊離抑制作用5)、血小板活性化因子(PAF)生合成抑制作用6)、インターロイキン-1β(IL-1β)産生抑制作用7)が考えられています。
図 メサラジンの作用機序
[補足]
炎症部位に遊走してくる好中球やマクロファージで生成される活性酸素は直接にあるいはプロテアーゼを活性化することによって間接的に細胞障害を引き起こすとされています。一般にヒドロキシラジカルと次亜塩素酸イオンは細胞障害性が最も大きいと言われています。メサラジンはスーパーオキサイドを消去しないものの過酸化水素、次亜塩素酸イオン及びヒドロキシラジカルを消去することによって活性酸素による細胞障害を抑制すると考えられています。
また、活性酸素は細胞障害を引き起こすだけでなく補体成分(C5a)、PAFなどの白血球遊走因子の生成を引き起こし、その結果として炎症性細胞の浸潤が促進されると言われています。LTB4は強力な好中球の走化性因子ですが、メサラジンはその生合成を抑制します。
したがって、メサラジンはLTB4の生合成抑制作用、更に活性酸素消去作用を介して炎症性細胞の浸潤を抑制し、炎症の進展を阻害すると推察されています。
一方、腸管粘膜内の肥満細胞は潰瘍性大腸炎やクローン病では脱顆粒を起こし、ヒスタミンなどのケミカルメディエーターを放出して局所の炎症を進展させることが知られています。メサラジンは、ヒト結腸の肥満細胞において抗免疫グロブリンE(抗IgE)の刺激によるヒスタミン遊離を抑制したことが報告されていますが、ヒトの腸管局所で検出されるメサラジン濃度を考慮するとメサラジンの薬効に一部、肥満細胞からのヒスタミン遊離抑制作用が関与している可能性が推察されています。
- 電子添文(18.1項)[2024年5月改訂(第4版)]
- 補足;インタビューフォーム(VI.2.薬理作用)[2024年5月改訂(第20版)]
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2024/5/31