社員インタビュー研究|わたらせ創薬センター
CMC研究所
Interview#06
スペシャリストを目指して。
理論的な製剤設計」。
それが研究者としての私の目標だ。
中学生時代の夏休み、将来の職業を調べる宿題がありました。そのとき薬剤師のことを知り、薬学に興味を抱くようになりました。数学や物理が好きだったこともあり、薬科大学では物理系薬学を専攻しました。この研究室での経験によって、「数理モデルと統計学を応用した理論的な製剤設計」という私の研究の軸が形成されたと思います。将来のキャリアについては、アカデミアの道も考えました。しかし、汎用的な理論を構築してみたいという自分の目標のためには、製薬企業での研究の方が適していると思ったのです。
当時——現在でもそうですが、QbD(Quality by Design)の概念による「科学的な根拠に基づいた製剤設計」が注目されていました。私は、その実現には従来の統計学からのアプローチにと数理学からのアプローチを加える必要と考え、製薬企業の面接ではQbDを意識したディスカッションをしました。その時の反応は各社さまざまでしたが、杏林製薬は私の考えを誠実に真っ正面から受け止めてくれました。「自分の研究理念やスタイルを尊重してくれる会社」と感じて入社を決めたのです。

「チーム」として創薬に挑んでいく。
入社以来ずっとCMC研究所で、製剤に関わる基盤技術研究に携わっています。DDS(Drug Delivery System)に関わる基盤研究プロジェクトもその一つです。核酸医薬など多様なモダリティをさまざまな組織・細胞に送達する技術の確立を目指しており、処方の検討からはじまり処方探索手法の開発、特性についての理論研究、特性評価法の開発などを進めています。また、並行して固形製剤に関する基盤技術研究も担当しています。自分の専門領域である数理モデルと統計学を応用した製剤設計手法の開発に取り組んでいます。
学生時代、杏林製薬のことを学会発表などで見る機会が少なく、研究に対しては保守的な印象を感じていました。しかし、入社してみて、けっしてそうでないことを知りました。研究者たちはそれぞれに際立つ特色や専門分野を有しています。その「個」が存分に力を発揮しながら、互いに理解し合い「チーム」として新薬の創出に取り組んでいます。そのスタイルに、私は杏林らしさを感じています。

数理モデルを導出創出。
逆境がかつてない集中力につながった。
私にとって転機になったのは、入社2年目にチャレンジした、新しい数理モデルの導出です。当時、ある製剤特性に関わる研究に携わっていました。その製剤特性が起因して薬効に影響を及ぼしている可能性があったのですが、特性が明確に定義されていないために関連は不明のままでした。そこで私は数理モデルによって特性を定義することを試みたのです。
私は、数理モデルの導出には、いわゆる一般的なWetの実験と、解析などDryの実験の両輪が重要だと考えています。ところが当時、コロナ禍の最中で在宅勤務となり、Wetな実験ができない状況でした。困り果てた私は、その分だけかつてないほど数理研究に集中することにしました。そして結果的には逆境がよい方に転び、まだ誰も見出していない数理モデルを導出できたのです。この数理モデルは社内でも高く評価され、杏林製薬の製剤設計で活用されています。

創薬のプロセスに革新をもたらす可能性がある。
私が取り組んでいる数理モデルを軸とした製剤設計は、社内ばかりでなく医薬全体で見てもかなり独創的なアプローチだと思います。それでも2年目で得た成果もバックボーンとなり、私の考え方やスタイルを前向きに受け止めてもらっています。若手のうちから「個」の力を発揮できる環境も、杏林製薬の魅力ではないでしょうか。
製剤設計に広く数理モデルを活用できようになれば、創薬の早い段階から製剤設計の高精度な検討が行え、研究開発に要する労力やコスト、時間を大幅に削減が可能になります。その結果、新薬を患者さんに早く届けることができ、探索研究に持てる力を集中できるようになります。「数理モデルと統計学を応用した理論的な製剤設計手法の確立」という目標を目指し、杏林製薬に、医薬の進歩に貢献できる研究開発に取り組んでいきます。

<1日のスケジュール>One Day
今日の作業の確認
(PCにて翌朝まで解析を自動で実行)
