新医薬品 導入

当社にとって、中核に据える新医薬品事業の基盤を再構築し、成長軌道に乗せるためには、開発パイプラインの拡充が喫緊の課題です。事業開発本部では、ライセンス部及びアライアンス部が一体となって、早期に開発パイプラインの導入、また既提携事業の安定化と新規事業の創出を実現することで安定的な収益確保及び新たな事業機会の創出を図り、新医薬品事業の持続的な成長に貢献していきます。

中期経営計画「 Vision 110 -Stage1-」では、事業戦略「導入による開発パイプラインの拡充」のもと、中長期的な収益を意識しつつ、想定される売上について目安を設定し、目標値として導入獲得件数6件以上の達成を目指します。当本部の成果は、導入したものが事業化され、収益になってこそ真に評価されるものと認識し、積極的な活動を展開していきます。

環境変化(社内外)

  • 治療に加え、診断・予防に対するニーズの高まり
  • 医療におけるDXの進展
  • 創薬の高度化・難易度上昇
  • 創薬モダリティの多様化・複雑化への対応
  • 開発パイプラインの枯渇
  • 強固な財務基盤

機会

  • オープンイノベーションによる技術革新の拡大
  • 異業種パートナーとの協業機会の拡大
  • 資金及び人員の大幅な増加
  • 治療薬、及び診断・予防に関わる製品の保有
  • 希少・難治性疾患に対する革新的新薬の価値の拡大

リスク

  • 導入契約資金の高騰
  • メガファーマによる青田買い
  • 多角的視点を有する人材の不足治験

中期経営計画 「Vision 110 -Stage 1-」の取り組み

事業戦略導出による開発パイプラインの拡充

導入品獲得力の大幅な強化

  • 導入対象とするモダリティ・疾患領域を拡大し、幅広い導入活動を展開する
  • 導入投資の増大、組織改革と人的資源の投入を増大する

DTx開発の推進

  • 耳鼻科領域における治療用アプリ開発を着実に推進する

中期経営企画の施策

組織改革と人員の投入による探索・評価

「Stage1」の目標を達成するためには、導入探索・評価(Search & Evaluation)において、常に複数の案件が検討の俎上にあり、関連する部門と密接に連携しつつ、スピーディかつ精度の高い評価を進めることが重要だと考えています。

事業開発本部のもとにライセンス部(導出入活動)及びアライアンス部(導出入の契約交渉、提携の管理)を配置し、人員を最大限に投入します。また本部機能を強化すべく、本部内での連携強化と人材の育成を図り、導入探索から評価、条件交渉、契約締結までをOne Stopで進められるよう組織を活性化します。

会社全体としても、スピード感をもって対応できるよう関連部門との協力体制を構築し成果目標の達成を目指します。

導入対象とするモダリティ、疾患領域の拡大

開発パイプラインの拡充のためには、対象となるモダリティ、疾患領域を拡大し、幅広く導入活動を実行することが必要だと考えています。

これまで杏林製薬が積極的に行ってきた低分子創薬にこだわらず、新たなモダリティやFC(呼吸器科、耳鼻科、泌尿器科)以外の疾患領域であっても当社の強みを発揮できる開発候補品、あるいは事業性が見通せる導入品の早期獲得に取り組みます。

DTx開発の推進

近年、医療現場においてもDX(Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション)の活用が進展する中、当社はDTx(Digital Therapeutics:デジタルセラピューティクス)の研究開発にも挑戦しています。

2022年11月、医療機器プログラムである「治療用アプリ」について、サスメド(株)と共同研究開発及び販売に関する契約を締結しました。

事業開発本部では、関連部門と連携し、耳鼻科領域における治療用アプリ(予定適応症:耳鳴)開発を着実に進めるとともに新たな治療用アプリの開発に関しても情報収集を幅広く実施していきます。

積極的なパートナリング活動の推進

杏林製薬は、中期経営計画「 Vision 110 -Stage1-」のもと、アライアンス部及びライセンス部が関連部署との連携を密にし、積極的なパートナリング活動を展開していきます。

これまでも、中期経営計画の事業戦略に沿って、2020年9月、あすか製薬(株)と前立腺肥大症治療薬「AKP-009」の共同開発および販売等に関する契約を締結、また2021年4月、MSD(株)と難治性の慢性咳嗽治療薬「リフヌア(2022年4月発売)」の日本国内での独占販売に関する契約を締結し、開発パイプラインの拡充を図りました。

2020年1月に米国エイタイヤー社(本社:米国)とライセンス契約を締結した間質性肺疾患治療薬「KRP-R120」については、同社と国際共同治験を実施することを決定し、日本において第Ⅲ相臨床試験を開始(2022年9月)しました。

2022年度は、早期開発ステージの導入品として、セルジェンテック(株)とファブリー病治療を目的としたGMAC(遺伝子導入ヒト脂肪細胞)の共同開発等の契約を締結(2022年6月)しました。

グローバルに導出活動を展開し、海外収益を拡大する

中期経営計画において自社創製品の価値最大化の取り組みとして、グローバル企業への導出活動を積極的に展開していきます。

前中期経営計画の成果としては、プリオセラ社(本社:アイルランド)に免疫調節薬「KRP-203」に関わる知的財産権等を譲渡(2020年10月)し、過活動膀胱治療剤「ビベグロン(日本販売名:ベオーバ)」については、エーザイ(株)とASEAN4カ国における開発・販売に関するライセンス契約(2021年3月)を、住友ファーマ(株)と台湾等における開発、製造及び販売に関するライセンス契約(2023年3月)を締結しました。

今後もワールドワイドでのパートナリング活動を積極的に展開することにより、中期的な成長を支える製品パイプラインの拡充を図るとともに、海外収益の拡大を推進します。

国内外企業とのパートナリング

図:「国内外企業とのパートナリング イメージ