新医薬品 創薬・開発

近年、多様な医療ニーズに対して、様々なモダリティの登場により、創薬が高度化し、難易度が上昇しています。このような環境下、当社グループは、臨床ステージに進展する創薬テーマの創出が急務となっています。

中期経営計画「Vision 110 –Stage1–」では、「医療ニーズに応える価値の高い新薬の創出力強化」を掲げ、新たな創薬戦略による創薬イノベーションへ挑戦します。疾患研究から見出された有望な創薬ターゲットと最新の創薬技術を掛け合わせることにより、新たな臨床的意義を創出します。

当社が得意とする低分子創薬に加え、新たなモダリティとして核酸創薬及び外部新規技術を積極的に活用し、自社の技術やアイディアだけでなく、外部の優れた技術を取り入れることで、新たな価値をもつ新薬を創出します。外部との連携により研究者の専門性向上や視野を広げるなど、長期ビジョン「Vision 110」の実現を担う人材育成に取り組みます。

価値の高い研究テーマの創出と推進、及び創薬技術の強化に取り組むとともに、価値最大化に向けた開発戦略をベースに複数ある開発プロジェクトを着実に推進し、マイルストンの達成を目指します。

環境変化(社内外)

  • 創薬の高度化・難易度上昇
  • 創薬モダリティや基盤技術の多様化・複雑化
  • 異業種参入に伴うヘルスケア領域の拡大
  • 社会保障費への意識の高まりと抑制の動き

機会

  • 基礎研究技術の進展による創薬研究機会の拡充
  • オープンイノベーション活発化による研究の加速
  • ビッグデータやAI活用による研究開発の効率化
  • デジタル技術による新たな治療選択肢の拡大
  • 医療経済性に優れた薬剤の重要性増大

リスク

  • AI創薬台頭による低分子創薬の効率化(膨大なコスト削減、開発期間の短縮)による当社創薬の優位性の低下
  • メガファーマのデジタル技術を駆使した開発スピード
  • 治験(臨床試験)及び新薬承認の厳格化による開発費用のさらなる高騰
  • 薬価制度改革による市場の縮小と事業性への影響

中期経営計画 「Vision 110 -Stage 1-」の取り組み

事業戦略医療ニーズに応える価値の高い新薬の創出力強化

新たな創薬戦略による創薬イノベーションへの挑戦

  • 薬剤貢献度の低い疾患に対する創薬に加え、課題がある既存治療に対しては新規技術による創薬に取り組む
  • 創薬技術と疾患研究の組み合わせにより価値の高い新薬を創出する
  • 創薬技術については、低分子創薬に加え、核酸創薬と外部新規技術を活用する
  • 疾患研究については、肺線維症、免疫・炎症性疾患、その他疾患を注力領域として取り組む

中期経営計画の施策

新たな創薬戦略による創薬イノベーションへの挑戦

当社グループの中核事業である新医薬品事業において、新薬の継続的な創出が課題となっています。課題解決には、創薬テーマの創出、及び治験へと進展する出口戦略を策定することが必要であり、そのための組織機能を強化しました。

創薬技術と疾患研究(創薬ターゲット)の掛け合わせにより新たな価値を創出する“創薬イノベーション”に挑戦します。これまで当社では、薬剤貢献度の低い疾患(アンメットメディカルニーズ)にこだわり、それらに対する創薬に注力してきましたが、中期経営計画 「Vision 110 -Stage1-」では、課題がある既存治療に対しても新技術によって臨床的意義を生み出す創薬に取り組みます。

創薬研究の注力領域としては、肺線維症、免疫・炎症性疾患、その他疾患を設定し、これらの領域における疾患研究を進め、新たな創薬テーマの創出と推進に取り組んでいます。

外部機関との連携強化と研究テーマの創出

肺線維症に関する研究では、京都大学大学院呼吸器疾患創薬講座との連携による成果として、独自の線維化病態モデルを構築し、さらに線維化のトリガーに着目した新たな研究テーマが創出されました。

ターゲット検証技術においても、アカデミアとの連携による強化に取り組んでいます。その他の領域においても、国内外の企業・アカデミアとの共同研究の機会を探っています。

一方、創薬技術においては、自社の強みである低分子創薬の強化に加え、核酸創薬における基盤の構築、外部技術の活用に取り組みます。自社の技術やアイディアだけでなく、外部の優れた技術を取り入れることで、新たな価値をもつ新薬を創出します。

当社では価値創出に向けた研究テーマの出口戦略を策定し検証することで、研究テーマの選択と集中を実行しています。探索研究の初期段階においては、TTP(Target Therapeutic Profile:目指す治療プロファイル)とそれに向けた科学的アプローチを重視して創薬活動を進めています。

またリード化合物の最適化研究以降は、TPP(Target Product Profile:目指す製品像)を基にGo、No Goの判断を行っています。

導入による開発パイプラインの拡充と価値を最大化する開発戦略・メディカル戦略

関係各部との連携をこれまで以上に強化し、導入候補品評価・獲得のスピードを上げるとともに開発候補品については、新規臨床評価法や治療ストラテジーを常に意識して、独自性の高い開発戦略を立案します。2020年1月にエイタイヤー社(本社:米国)から導入した融合タンパク製剤「KRP-R120: エフゾフィチモド(遺伝子組換え)」の第III相臨床試験は、2022年9月より国際共同治験として開始し、順調に進捗しています。

また2022年11月に、サスメド(株)と耳鼻科領域における治療用アプリ「KRP-DT123」の共同開発及び販売に関する契約を締結しました。当社の重点領域の一つである耳鼻科領域において、医薬品とは異なるアプローチによる新たな治療選択肢を患者さんに提供し、医療に貢献します。「KRP-DT123」は、2023年度耳鳴を対象疾患とした特定臨床研究開始が予定されています。

今後、導入品を含め開発パイプラインを拡充していく中で、モダリティの多様化、グローバル開発の実施が想定されます。これらに対応するべく、独自の戦略立案とともにレギュラトリー機能についても強化していきます。

図:「新たな創薬戦略による創薬イノベーションへの挑戦」イメージ

創薬研究拠点の再構築

探索初期段階の研究から開発研究までの全ての研究拠点を集約し設立した、わたらせ創薬センターでは、薬理、合成、安全性、薬物動態及び製剤・分析の研究分野が効率的かつ連携のとれた体制で創薬研究を進めています。各分野に精通した研究者は、組織の枠を超えたチームで研究活動を行う体制により、研究開発のスピードアップと質の向上を図り、世界基準の創薬研究を実現します。

子会社であったActivX Biosciences, Inc.については、初期段階の探索研究テーマの量的・質的な充実、及び低分子化合物の創薬で一定の役割を果たしたことから2023年3月31日をもって解散しました。KiNativ(キナーゼ解析技術)はわたらせ創薬センターに移管し、今後も活用していきます。

開発品の動向

医薬に関する研究活動サポート

杏林医学教育プロジェクト助成

杏林製薬株式会社は、2021年度より公募による「杏林医学教育プロジェクト助成」を行っております。

当該助成は、医学関係学会が独立して企画・運営する医学教育プロジェクトへ支援することで、医療関係者の教育機会の創出、ならびに知識・能力の向上を通じ、本邦における医療の質の向上に寄与することを目的とする制度です。

2024年度は、耳鼻咽喉疾患領域における教育プロジェクトを募集しました(募集終了)。

今年度分の募集は終了しております。

2024年度採択プロジェクト

学会名:一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会

プロジェクト名:耳鼻咽喉科・頭頸部外科手術手技教育プログラム(活動期間:3年間)

2021年度採択プロジェクト

学会名:一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会

プロジェクト名:耳鼻咽喉科・頭頸部外科手術手技教育プログラム(活動期間:3年間)