生産

高品質な医薬品を安定的に患者さんにお届けすることが、製薬企業である私たちの重要な使命です。品質基準の厳格化や製造コストの上昇、製造技術の高度化、安定供給への要望の高まり等に対応するため、当社グループは、信頼性保証体制の強靭化を推進するとともに、サプライチェーン・マネジメントの強化、生産能力の向上と製造原価の低減に取り組んでいます。

製造体制としては、2024年4月の高岡工場稼働により4工場体制が整いました。製造品目の全体最適化を進め、製品供給能力の最大化を図るとともに、継続的な生産リソース投入や工程改善により原価低減を実現し、持続可能な生産体制を確立します。また各部門が強く連携し、GxPのレベルアップを通じて信頼性の向上と安定生産の維持を図ります。高い品質と安全性の確保がより一層求められる中、当社グループでは医薬品に加え、診断事業や治療用アプリ開発等も進展しています。

このような社内外の変化に柔軟かつ迅速に対応し、法令遵守のもと高品質な製品を安定して提供することにより、健康への貢献を果たしていきます。

※医薬品等に係る様々な管理の基準

環境変化

  • 製薬企業への信頼性確保の要望の高まり
  • 創薬モダリティや基盤技術の多様化・複雑化
  • 製造コストの上昇、製造技術の高度化
  • 地政学的リスクの高まり

機会

  • 高品質な製品、安定供給への要望の高まり
  • 薬剤費抑制策の推進に伴う後発医薬品の需要増加
  • 外資系企業の国内参入による受託のニーズ拡大

リスク

  • 毎年の薬価改定による原価率の上昇
  • 原油高や物流コスト上昇による原材料価格の高騰
  • 国内外のサプライチェーンにおける品質問題の発生

中期経営計画 「Vision 110 -Stage 1-」の取り組み

事業戦略医薬品生産能力の強化と製造原価の低減

生産能力の最大化と原価低減の実現

  • 高岡工場の確実な稼働と各工場の全体最適化により、生産能力を最大化する
  • GMPのレベルアップにより信頼性の向上と安定生産の維持を図る
  • 継続的な改善活動に取り組み、原価低減を実現する

高品質な医薬品の安定供給

  • 製品・原材料などの調達・管理(サプライチェーンマネジメント)を強化する
  • GQPを遵守した品質マネジメントを強化する
  • 新たなモダリティに対応した品質管理体制、サプライチェーンを適切に構築する

高岡工場の稼働

医療用医薬品の生産数量の拡大に伴い、生産能力の強化が必要となったことから、新たな生産拠点として高岡工場を建設し、2024年4月に稼働を開始しました。年間約20億錠(内服固形剤)の生産能力を有し、主に後発医薬品の製造を行う工場として、数量の多い製品に限らず、柔軟な製造に対応できる設備を整えています。

またGMP(医薬品等の製造管理及び品質管理の基準)のさらなるレベルアップを実現できる施設として、各種作業の省力化、省人化を進め、製造効率の向上を図ることにより、安定供給と低コスト生産の達成が可能です。環境面においては、既存の工場よりもCO2排出量を大幅に削減できる設計とするだけでなく、液化天然ガス(LNG)などクリーンエネルギーや、水力発電等の再生可能エネルギーの積極的な活用により環境負荷軽減を図っていきます。

高岡工場の稼働率向上は、後発医薬品事業の成長に直結する優先課題と捉えています。まず外部に製造委託している製品の内製化、後発医薬品の重点品及び「ムコダイン錠」の増産体制の構築に取り組み、その後は後発医薬品の主力工場として、いち早く高い操業水準への移行を目指します。

写真:高岡工場

高岡工場 所在地:富山県高岡市

製造体制の全体最適化による安定供給体制の構築

これまで製品供給能力の最大化を目指し、各工場の特徴を活かして、製造品目と製造所の組み合わせの最適化を進めてきました。

能代工場では、製造設備の増強、人的資本の強化(人員・人材の確保と教育)を図りつつ、新薬を中心に錠剤やカプセル剤の製造を行っています。

滋賀工場は、外資系製薬会社の日本向け医薬品の製造など、グループ外からの受託比率が高く、積極的に受託製造を進めており、信頼される受託工場への進化に取り組んでいます。

井波工場では、主に後発医薬品を取り扱い、内服固形剤の他、点眼剤の製造を行っています。また各工場ともにGMPの高度化を推進し、品質システムの維持・改善に取り組みながら、PIC/SGMPへの対応を整備、国内外への供給体制も構築しています。

今後は、4工場製造体制のもと全体最適化と強靭化を推進して医薬品の生産能力の強化を図り、安定供給体制の構築を目指します。

※医薬品査察協定及び医薬品査察協同スキーム

写真:能代工場

能代工場 所在地:秋田県能代市

認証登録工場 環境マネジメントシステム ISO14001

労働安全衛生マネジメントシステム ISO45001

写真:滋賀工場

滋賀工場 所在地:滋賀県甲賀市

認証登録工場 環境マネジメントシステム ISO14001

労働安全衛生マネジメントシステム ISO45001

写真:井波工場

井波工場 所在地:富山県南砺市

認証登録工場 環境マネジメントシステム ISO14001

労働安全衛生マネジメントシステム ISO45001

信頼性の向上と製品品質の維持

製品に要求される品質が厳格化する中、製造・品質管理に関わる法令遵守及び品質管理体制の一層の強化・徹底、品質文化の確立を図っています。工場間のGMP相互監査、データインテグリティ(データの完全性、一貫性、正確性を保証する仕組み)の強化、従業員の定期的な研修と理解度確認、映像を駆使した標準作業の習得等、様々な角度から品質確保に関わる取り組みを推進し、患者さんや医療関係者の信頼にお応えできる製品の提供に注力します。

製造効率の向上によるコスト競争力の向上

医薬品の安定供給と低コスト生産を実現する製造体制の構築を追求し、製造技術の向上や新たな技術の獲得など、製造の質を上げる取り組みを生産活動の中で実践しています。さらに生産リソースの適正配備や工程の改善などにより製造効率の向上に努め、ローコストオペレーションの徹底と生産数量の増加を通して、コスト競争力向上に向けた仕組みを強固なものにしていきます。

サプライチェーン・マネジメント(SCM)

サプライヤー及びパートナリング先のグローバル化やモダリティの多様化により、サプライチェーンは複雑さを増しています。こうした環境変化に対応すべく、強靭なサプライチェーンの構築を目指しており、上流原料・原薬製造から最終的な製品の製造・供給までを可視化し、サプライチェーンの流れを監視・コントロールする体制を築いています。

原料・中間体・原薬を含む医薬品のサプライチェーンは製品ごとに多種多様であり、かつ国内外の数多くのサプライヤーに支えられています。調達の鎖を途切れさせずに安定供給を継続するには、個々のサプライヤーとの関係を強化し、連携・情報共有を密にすることが不可欠と考えています。またリスクヘッジとして、既存のサプライヤーに加え、複数の代替調達先や各種代替輸送ルートの確保などに努めるとともに、輸出入を含むロジスティクスの適正化も推進し、安定供給を強化しています。

さらなる安定供給実現に向け、製品ごとに適正在庫基準を設定し調達計画を立案するとともに、季節性や流行期など変動要因のある製品については、営業部門との連携により日々刻々と変化する状況を捉えながら柔軟な調達に努めています。

ここ数年、地政学的なリスクや為替変動、エネルギーコスト上昇や半導体不足等による原材料価格の高騰、物流の2024年問題などが顕在化する中、当社グループ内外の製造委託先との生産計画・在庫の調整、調達先の複数化や代替先の開拓、物流の効率化等を実施することにより様々なリスク低減を図り、製品の安定供給に継続的に取り組んでいきます。

持続可能な調達への取り組み

高品質な製品の安定供給に努め、持続可能なサプライチェーンを構築することが重要と考え、その実現のために取引先にも社会的責任に基づいた取り組みと協力を求めています。また環境、社会に与える影響に配慮した持続可能な調達活動の推進に向けて「サステナブル調達方針」を制定し、国内外を問わず、関係法令、国際ルール及びその精神を遵守して、高い倫理観を持って調達活動を行っています。

取引先の実地調査

新規サプライヤーの選定に際しては、法令遵守、労働安全、環境保全などへの取り組み状況を実地調査、確認した上で、取引を決定しています。すでに取引関係のあるサプライヤーには、持続的な品質、安定供給の維持・向上を図るため、定期的に実地訪問しています。実地調査等で改善すべき事項が見られた場合は、改善案を提示して是正計画の策定を求め、改善状況をフォローアップしています。