国内医療用医薬品市場を取り巻く環境は、創薬イノベーション・エコシステム構築に向けた取り組みが強化される一方で、2025年度も8年連続の薬価改定となる中間年改定が実施されるなど、年々厳しさを増しています。
情報提供活動においては、コロナ禍を経てデジタル技術の活用が進むなど多様化し、医師の働き方改革の推進などによって、さらなる変化も想定されます。このような環境下、当社グループでは、中期経営計画「Vision 110 -Stage1-」の事業戦略の一つに「新薬比率の最大化」を掲げ、新薬の普及による成長を目指しています。
医療関係者との面談を軸とした良質なコミュニケーションによって医療現場におけるニーズを的確に把握することで、新薬の普及最大化を推進します。また高品質な医薬品の安定供給を通して、当社製品を必要とする多くの患者さんの治療に貢献することにより、製品価値の最大化を図ります。
環境変化
- 医療財政逼迫に伴う医療費・薬剤費抑制策の推進
- 治療に加え、診断・予防に対するニーズの高まり
- 医療現場への情報提供のあり方の変化
機会
- 新薬ラインアップの拡充と普及
- 各種感染症の流行に伴う検査需要・患者数の増加
- デジタル活用による幅広い情報提供手段の展開
リスク
- 毎年の薬価改定による主力製品の売上・収益の減少
- 環境の変化に伴う医薬品・医療機器へのニーズの多様化
- MR訪問規制などによる、医師とのコミュニケーション機会の減少
中期経営計画 「Vision 110 -Stage 1-」の取り組み
事業戦略新薬比率の最大化
新薬の普及最大化
- リアル面談を軸にディテールのインパクトを高め、新薬の成長を最大限に加速する
- ※新薬:ベオーバ/ラスビック/リフヌア/デザレックス/フルティフォーム 等
ソリューション提供活動の推進
「医薬品情報の提供・収集・伝達によって医薬品の適正使用を実現し、医療に貢献する」というMR本来の役割を十分に果たすには、医療関係者との双方向のコミュニケーションを実現することが重要であると考えています。コロナ禍ではMRの医療機関への訪問や医療関係者との面談が一部制限されたことで、情報提供活動におけるデジタル技術の活用が進みました。
このような中、医療関係者とより質の高いコミュニケーションを図るため、医療機関を訪問する直接面談を軸として、デジタルチャネルを融合したソリューション提供活動を推進しています。全MRに対して自社製品関連疾患に関する総合的な課題解決の提案に必要なディテールスキル教育を行い、また全営業所長に対してはコーチングスキル研修を行うことで、全体の能力向上と育成を図るとともに、社内に集積した営業データを分析し、医療関係者のニーズを把握することで、質の高い情報提供活動に繋げています。
ソリューション提供活動では、患者さんを起点とした問題の仮説から、現状のニーズを把握することで課題を形成し、複数ある当社製品の中から処方提案を行っています。例えば感染症領域では、医療機関における感染制御(予防)に「ミルトン」「ルビスタ」、原因微生物の同定(診断)に「GeneSoC」、抗微生物薬の適正使用(治療)に「ラスビック」を紹介するなど、総合的な情報を提供しています。呼吸器科・耳鼻科領域においては、「リフヌア」「ラスビック」「デザレックス」「フルティフォーム」などの充実した製品ラインアップにより、各疾患への適切な処方提案を行うなど、医療関係者のニーズに応じた課題解決に資する情報提供活動を推進し、新薬の普及最大化を図っています。
新薬比率の向上による持続成長
成長トレンドを実現するためには、新薬の普及に注力し成長を加速させることが重要であるとの認識に基づき、国内医療用医薬品の売上に占める新薬比率をKPIの一つに掲げ、普及の最大化に積極的に取り組んでいます。その結果、2024年度の新薬比率は53.8%とStage1の目標値である50%以上を1年前倒しで達成することができました。
「ベオーバ」は、膀胱平滑筋のβ3アドレナリン受容体に作用し、蓄尿機能を亢進させることで過活動膀胱(OAB)の諸症状を改善する薬剤であり、有効性と安全性の観点から多くの先生方にご評価いただいています。OABは国内の罹患者数が1,000万人を超えており、生命に直接関わるような疾患ではないものの、患者さんのQOLを著しく低下させる疾患です。しかし受診率は極めて低く、治療機会を逸している患者さんが多くいると考えられることから、受診率拡大に向けた新たな疾患啓発活動に積極的に取り組んでいきます。
「ラスビック」は、ニューキノロン系の抗菌剤であり、感染症の治療推奨薬として複数の診療ガイドラインに掲載されています。近年、細菌等の病原性微生物が抗菌薬への耐性を獲得し、薬が効かなくなるAMR(Antimicrobial Resistance)の増加が大きな社会問題になっています。当社は、診療ガイドラインに基づいた治療・考え方を浸透させることにより、抗菌薬の適正使用の推進を図っていきます。
「リフヌア」は、難治性の慢性咳嗽に適応を有する唯一の治療薬です。味覚関連の有害事象の発現だけではなく、比較的早期に効果が得られること等が影響し、服薬継続日数が想定より短いことが処方状況の分析により明らかとなりました。2025年4月発刊の「咳嗽・喀痰の診療ガイドライン」で明確となった難治性慢性咳嗽の定義、P2X3受容体拮抗薬の位置づけのもと、唯一の治療推奨薬として普及に努めます。
「デザレックス」は、1日1回投与でアレルギー症状を抑える服薬コンプライアンスの高い製品です。眠気を起こしにくく、添付文書に自動車運転への注意記載がないことに加え、食事による影響を受けないため、患者さんのライフスタイルにあわせて服用できます。引き続き、有効性と使いやすさを兼ね備えた薬剤としてさらなる浸透を図ります。
「フルティフォーム」は、ICS/LABA(吸入ステロイド/長時間作用性β2刺激薬)配合剤であり、気道の炎症を抑えて発作を起こりにくくする薬剤と気道を広げる薬剤の配合剤です。エアゾール製剤であるため、高齢者や女性など吸気力の弱い患者さんにも服薬しやすい製品として、今後も喘息に苦しむ患者さんの治療に貢献していきます。
- 新薬比率

- 主力5製品売上

特定領域でのプレゼンス確立
呼吸器科・耳鼻科・泌尿器科を特定領域としてリソースを集中するFC戦略のもと、同領域でのプレゼンス確立を目指して、約600名のMRが医療関係者に医薬品の適正使用に関わる情報提供・収集・伝達活動を行っています。営業体制としては、二次医療圏をベースとした「チーム制」(一定のエリアを複数のMRが担当する制度)をいち早く1998年より導入し、チームでエリアを育成するエリアマネジメントを展開しています。多様化する医療ニーズに迅速かつ組織的に対応するこの取り組みをさらに進化させ、お互いが助け合いチームで目標を達成する仕組みを展開していきます。
医薬品の適正使用の推進
医薬品は使い方を誤ると患者さんの健康を害する恐れがある一方、適正に使用していても副作用が発生する場合があります。医薬品がより安全・有効に使用されるために、適正使用情報を正確かつ迅速に医療関係者に提供するよう努めるとともに、医療現場で使用された際に得られた有効性や安全性の情報を収集し、その分析・評価の結果を医療関係者に伝達しています。人々の健康に貢献するという使命感のもと、高い倫理観に基づいて行動し、関係法規・ガイドライン、業界ルール、企業行動憲章を含む社内規程を厳重に遵守しながら、業務に邁進しています。
- MRの体制

- 特定領域(呼吸器科、耳鼻科、泌尿器科)を中心とする定期訪問先への営業活動の重点化を図っています。
- 主力製品と開発中の新薬・DTx

- 特定領域(呼吸器科、耳鼻科、泌尿器科)における開発パイプラインの拡充と医療関係者との強固な信頼関係構築により、新薬事業を強化しています。
