環境に配慮した事業活動

基本的な考え方

当社グループは、「環境問題への取り組みは人類共通の課題であり、企業の活動と存続に必須の要件として、主体的に行動する」と企業行動憲章に掲げ、気候変動への対応を含む環境に配慮した事業活動をマテリアリティの一つとしています。

サステナビリティの基本方針に基づき、事業活動のあらゆる場面で、省エネルギー・省資源、廃棄物の削減、化学物質の管理強化など環境負荷物質の削減と限りある資源の有効利用を推進し、目的・目標の設定と見直しを常に行うことによって、環境保全及び汚染予防に主体的、積極的に取り組みます。

TCFD提言に基づく情報開示

当社は、気候関連財務情報開示タスクフォース(以下、TCFD)の提言への賛同を表明するとともに、TCFD提言に基づき、気候関連リスク / 機会を特定した上で気候変動、環境問題への対応を進めています。

ガバナンス

当社グループは、気候変動対応を含む環境対策の実行・推進に関して、担当執行役員を委員長とする「環境委員会」を設置し、グループ全体の環境対策等を検討する体制を構築しています。

総務部を統括部署とする同委員会では、地域社会の環境に関係する事業活動を行う工場、研究所及び経営戦略に関わる役員/執行役員等が中心となって、環境問題に関する対応(ビジョン、目標、ロードマップ等)の検討・見直しを行います。

同委員会はEHS活動とも連携し、気候変動におけるリスク、機会の特定、評価、さらなる対応等を含めて環境問題への対応について総合的に取りまとめ、経営会議における意思決定の後、取締役会に報告します。

図:「環境マネジメント体制」

戦略

環境問題については、長期的なビジョンとして「2050年カーボンニュートラルの実現」への挑戦を掲げ、「CO2排出量を2030年度に2015年度比46%削減」という目標に向けて、再生可能エネルギーへの段階的切替や新規設備投資の検討を進めることで、CO2排出量削減に取り組んでいます。

環境保全については、「地球温暖化防止」「資源保護」「自然環境との調和」を重点テーマとして目標を設定し、限りある資源の有効利用を推進します。また当社グループの全ての工場は環境マネジメントシステムの国際基準であるISO14001を取得しており、今後も維持・推進します。

リスク管理

地球温暖化や気候変動そのものの影響、及び気候変動に関する長期的な政策動向による事業環境の変化が当社グループの事業や経営に及ぼしうる影響について、脱炭素社会への移行リスク・気候変動に起因する物理的リスク・収益機会に分け、シナリオ分析を行っています。

シナリオ分析にあたっては、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書のSSP1-1.9(1.5℃シナリオ)、SSP5-8.5(4℃シナリオ)等を参考にしています。

1.5℃シナリオ

移行リスク
分類 事象 リスク 対応方針
政策・法規制 環境税(炭素税)の導入
  • 環境税(炭素税)が導入され、研究・生産・営業に関わる温室効果ガスの排出に課税が行われた場合、環境税の導入により、コスト増加となる可能性がある。
  • 環境委員会設置によるCO2排出量削減活動の更なる推進
  • 工場・研究所での再生可能エネルギー電力の段階的切替
  • 営業車両のHV車へ切替
  • EHSマネジメントシステムの効率的運用
設備・機器の導入
  • 新たな法規制により、既存の設備を再生可能エネルギーに対応した設備に更新する場合、新規設置によるコスト増加となる可能性がある。
  • 省エネルギー設備・機器の新規導入検討と計画的設備更新
市場 調達・操業コストの変化
  • 電力の再生可能エネルギー比率を上げた場合、電力調達コストが増加する可能性がある。
  • 調達先・物流委託先の移行リスクへの対応により、生産原価・物流コストが増加する可能性がある。
  • 再生可能エネルギー電力の計画的導入
  • 高効率機器の導入検討
  • 調達先・物流委託先等との協働による物流コストの削減
評判 投資家からの評価
  • 当社の気候変動対策への遅れにより、投資家の信頼を失い株価へ影響する可能性がある。
  • 情報開示不足により、株価が下落する可能性がある。
  • 気候変動対策の実施状況等の適時・適切な開示
  • 外部調査への参加

4℃シナリオ

物理的リスク
分類 事象 リスク 対応方針
急性リスク 異常気象(台風・大雨等)による直接的な被害
  • 局地的豪雨・台風の大型化等により、研究・生産・物流拠点が浸水し、操業停止及び修復費用が発生する可能性がある。
  • 自社拠点だけではなく、サプライチェーン(原料調達・出荷物流)が寸断される可能性がある。
  • 水害対策等を想定した設備計画の検討・実施
  • 緊急事態発生を想定した訓練の実施
  • 適切な在庫調整
  • 複数の原料調達先・代替先の確保
慢性リスク 気象パターンの変化・気温上昇・海面上昇等による拠点・調達・操業の変化
  • 複数の研究・生産拠点が河川に近く、気温上昇による海面上昇、気象パターン変化による河川氾濫への対策、または拠点見直しによりコスト増加となる可能性がある。
  • 調達先・物流委託先の物理的リスクへの対応により、市場価格が上昇し、生産原価・物流コストが増加する可能性がある。
  • 気温上昇により、製造・保管・物流における空調の温度管理におけるコスト増加となる可能性がある。
  • 水害対策等を想定した設備計画の検討・実施
  • 適切な在庫管理
  • BCP(事業継続計画)の観点から拠点の最適化の検討
  • 複数の原料調達先・代替先の確保
  • エネルギー効率の改善
収益機会
分類 事象 リスク 対応方針
市場の変化 疾病動向の変化
  • 気温の上昇により感染症が増加し、当社のビジネスチャンスが拡大する可能性がある。
  • 感染症に関わる予防・診断・治療における当社製品の需要や適応範囲が拡大する可能性がある。
  • 感染症領域におけるソリューション提供型営業活動の展開
  • パイプライン拡充への積極投資

指標と目標

環境問題への取り組みは人類共通の課題であり、企業の活動と存続に必須の要件として主体的に行動し、「2050年カーボンニュートラル」の実現に挑戦します。

2030年目標:CO2排出量を2030年度に2015年度比46%削減する。

CO2排出量と対2015年度削減率(Scope1+Scope2)

図:「排出量と対2015年度削減率(Scope1+Scope2)グラフ」

目標達成に向けた施策

計画的設備更新及び積極的な設備投資

耐用年数経過後の製造設備や空調関連設備等について、省エネルギー性能に優れた最新機器へと計画的に更新するとともに、照明のLED化等を進め、CO2排出量の削減に取り組んでいます。また熱量転換・高効率機器への積極的な設備投資については、2023年度に行った検討を踏まえ、具体的な取り組みを推進していきます。

写真:高岡工場

2024年4月に稼働した高岡工場は、既存の製造拠点よりもエネルギー使用量を削減するため、効率の高い設備システム・機器を採用しています。

また大気汚染や地球温暖化に配慮したLNG(液化天然ガス)などのクリーンなエネルギー、水力発電等の再生可能エネルギーを使用しており、一般的な重油や火力発電の使用と比較し約6分の1までCO2発生量を削減することが可能となっています。

排水処理についても、近隣河川の汚染や周辺地域への臭気発生を考慮した設備を完備し、環境負荷の低減を図っています。

写真:ReHP概念図
ReHP概念図

わたらせ創薬センターでは、ReHP技術を導入しています。2023年度の当システムの運転実績は、従来の空気熱源ヒートポンプに比べて、削減電力量は58,502kWh、CO2削減量は約23トンとなり、約29%の省エネルギーを実現しました。

※ReHP(Renewable Energy Heat Pump)とは、再生可能エネルギー利用高効率ヒートポンプシステムの呼称で、わたらせ創薬センターのReHPは、隣接する2つの建物(CSとLAB1)において、地中熱及び未利用エネルギーである水冷チラー排熱等からなる熱源と熱利用機器(空調機及び給湯器)を1つの熱源水ループを介して熱融通することによって、エネルギー利用効率の向上を目指すシステムです。

再生可能エネルギーの導入

研究所・工場において再生可能エネルギー由来電力への切替を順次進め、CO2排出量の削減を図っています。

営業車両の削減及びハイブリッド車等への切替

地球温暖化防止の観点から営業車両の削減及び低排出ガス車やハイブリッド車等のエコカーの積極的な導入を行っています。

2024年3月時点で837台全ての営業車両が低排出ガス車の基準を満たしており、その内2004年から導入を進めているハイブリッド車は333台です。またエコドライブを励行することで、環境への配慮と交通安全を意識した車両の運用をしています。

その他の取り組み

水資源の管理

取水・排水量を把握するとともに、研究所・工場において排水処理棟、一次処理装置により適切に処理し水質を管理した上で排水することにより水資源の保全に努めています。2023年度の取水量は219千㎥、排水量は101千㎥で、各研究所・工場の排水のpH、BOD・SSは基準値を下回りました。

大気汚染物質の管理

ボイラー及び発電機により排出されるばいじん、NOx、SOxを定期的に測定・管理しています。

廃棄物の削減

限りある資源の有効利用のため、廃棄物の3R(リデュース・リユース・リサイクル)に積極的に取り組んでいます。

化学物質の管理

PRTR法に基づき対象化学物質の適切な管理に努めています。

生物多様性保全

能代工場では、郷土の防風林として、また憩いの場として市民に親しまれている「風の松原」を守る市民ボランティア活動に参加しています。

わたらせ創薬センターでは、構内の野生動物に対する環境の向上を目指し、渡良瀬遊水地に面した樹木に巣箱を設置し、野鳥の営巣が確認されました。

キョーリン製薬グループのマテリアルフロー(2023年度)

図:「キョーリン製薬グループのマテリアルフロー(2022年度)」

CO2排出量(Scope1、2、3)

当社グループは、サプライチェーンを通してCO2排出量を策定すべく、その範囲の拡大に努めています。

Scope 3その他の間接排出
  • 購入した製品サービス
    6,233t
  • 資本財
    5,263t
  • Scope1、2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動
    1,959t
  • 出張
    763t
  • 雇用者の通勤
    977t
Scope1自社での燃料の使用や
工業プロセスによる直接排出
  • 直接排出
    12,895t
Scope2自社が購入した電気、
熱の使用に伴う間接排出
  • エネルギー起源の間接排出
    12,110t
Scope 3その他の間接排出
  • 事業から出る廃棄物
    259t
  • 販売した製品の廃棄
    519t
Scope 3その他の間接排出
  • 輸送、配送
    835t

環境関連データ

CO2排出量(Scope1+Scope2)

CO2排出量(Scope1+Scope2)グラフが表示されます。

エネルギー使用量

エネルギー使用量グラフが表示されます。

水使用量

水使用量グラフが表示されます。

排水量

排水量グラフが表示されます。

売上当たりの廃棄物発生量

売上当たりの廃棄物発生量グラフが表示されます。

包装容器リサイクル量

包装容器リサイクル量グラフが表示されます。